Students' Sparks

磁性細菌の謎を解き明かしたい

自然科学研究科 自然システム学専攻 博士後期課程2年
下茂 梨乃SHIMOSHIGE, Rino

HaKaSe+(ハカセプラス)選抜学生として、博士学位の取得を目指して研究に励む、自然科学研究科自然システム専攻博士後期課程2年(取材当時)の下茂梨乃さんに、博士後期課程の魅力や研究のやりがいについてお聞きしました。

まず、博士後期課程に進学されたきっかけを教えてください。

 はじめて博士を意識したのは、高校生のときです。博士号を取得して企業で研究者として活躍されている方の話を聞く機会があり、「研究者になりたい」という夢を持つようになりました。大学、大学院と進学し、博士前期課程では一旦就職活動もしました。しかし、初めて対面で学会に参加したとき、大学院生や研究者の熱い議論を見て、「自分もこうなりたい!」と改めて強く感じました。とはいえ、経済的な問題もあったので、当時は迷っていました。そんななか知ったのが金沢大学の「HaKaSe」です。手厚い奨励金や支援体制を知り、「今しかない!」と思い、博士進学を決意しました。

HaKaSe+ではどのような支援が受けられますか?

 まず経済的支援として、研究に専念できるだけに十分な奨励金が支給されます。また、海外旅費の補助もあります。このおかげで私は今年、スペインで開催された国際学会での発表に挑戦することができました。その学会ではポスター賞をいただくこともでき、大きな自信につながりました。またHaKaSeでは、異分野の博士学生と交流する機会もあります。分野が異なる国内外の学生とディスカッションすることで、自身の研究の意義や課題を多角的に見つめ直す機会にもなりました。

下茂さんが取り組まれている研究テーマについて教えてください。

? 私の専門は生物学で、研究対象は、磁性細菌です。磁性細菌は、多様な水環境に生息しています。酸素が少ない環境に生息しており、細胞内の磁石(磁鉄鉱の結晶)を利用して、常に変動する酸素濃度勾配の変化に対応し、最適な微好気的環境に留まります。その際、細胞体を地磁気方向に値して水平に配置し、2次元の運動のみで最適な環境に留まるという面白い行動をします。

 私は、この細菌が持つ「方向感覚」や、それを担う「鉱物生合成能力」に着目しています。特に、磁性細菌がどのようにして磁鉄鉱結晶を形成し、細胞内配置しているのか、また多様な系統に共通する生命現象があるのか、などを明らかにすることが、私の研究の最終目標です。磁性細菌の研究は、未解明なことが多く、日々の実験を通して世界初の発見に出会えるところが魅力です。

これまでの研究活動を通じて、どのようなスキルが身についたと感じますか?

? まず「語学力」と「コミュニケーション力」です。英語での学会発表は大きな挑戦でした。特に昨年参加したアメリカの学会では、話すスピードの速さについていけず、将来の夢である海外で研究できるのか、不安に感じたほどです。その学会では研究成果をうまく説明できず、悔しい思いをしましたが、それをばねに、金沢大学で行われていた英語での懇談会(Funglish)に参加して、英語力の向上に取り組みました。今年、HaKaSeの支援を受けて参加した、スペインで開催された国際学会では、参加者と英語でコミュニケーションでき、ポスター賞を受賞することができました。本当にうれしかったです。

 もう一つはあきらめず継続するチカラです。研究は困難や失敗の連続です。私の研究テーマや計画もこれまで何度も見直す必要がありました。でも研究者として生きていくんだったら、絶対にどこかで壁にぶつかると思っています。「それを今経験してるだけ」と思いながら、研究を続けています。HaKaSeでは同じ境遇の国内外の学生と交流する機会があるので、互いに支えにもなっています。困難に直面しても、これまで続けてこられたことは大きな自信につながっています。

最後に将来の夢を聞かせてください。

? 将来は、大学や研究所で研究者として磁性細菌の研究を続けたいと考えています。目指す研究者像は、世界で活躍する研究者です。研究はうまくいかないことも多いですが、苦労したほど、良いデータが取れたときの喜びは大きいですし、すごく楽しいと感じます。

 私の研究対象は目では見えない細菌なので、見た目はただの濁った水です。それを手順通りに実験して、予想通りの結果が顕微鏡で確認できたときは喜びを感じます。でも、もっと楽しさを感じるのが予想しないものが見えたときです。色々な可能性を考えて、思考の世界に飛んだりします。国内ではこの分野の研究室が限られているのですが、将来は、海外で活躍する研究者として、新たな発見ができたらいいなと考えています。

 

所属?学年?年次などはすべて取材当時のものです。ご了承ください。

 

(サイエンスライター?見寺 祐子)

 

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